矯正歯科医院の先生とスタッフが交わしている会話は、専門用語だらけでよく分かりませんね。
主な矯正歯科専門用語を理解すると、自分の治療もより詳しく理解できますし、待ち時間も退屈しません。
より深く矯正歯科を知りたい人のコーナーです。 |
ア行
アーチワイヤー
マルチブラケット法で、ブラケットの中心にある溝(ブラケットスロット)に中を歯列全体にわたって通してあるワイヤーのこと。ステンレススチール系(曲げることの出来る銀色のワイヤー)、ニッケルチタン系(超弾性を持つ形状記憶合金、治療の最初の段階でよく用いられる)、また特殊の素材としてコーティング系のワイヤーがあり、より審美的に見せるために白色、ゴールド色などにコーティングを施してあるものもある。
後戻り(あともどり)
英語ではrelapse(リラップス)。治療を終了した後で、症状が再発することをいう。必ずしも元へ戻ると言うことではなく、新たな不正状態が発生することもある。多くは保定の不良によって起きると考えられている。
安静位(あんせいい)
下顎安静位とも言う。顎の力を抜いて一番楽にしていられる位置。通常は、しっかり噛み合わせた位置から2-3mmほど開いた位置である。
アングルの分類(不正咬合に関して)
アングルは多くの不正咬合を3種類に分類した。
アングルⅠ級:大臼歯関係には異常がないもの。 |
*配列の凸凹だけが問題のケースです。 |
アングルⅡ級1類:上顎大臼歯が相対的に手前にずれていて、かつ上顎前歯が外向きになっているもの。 |
*一般的な感覚で言う”出っ歯”のケースです。 |
アングルⅡ級2類:上顎大臼歯が相対的に手前にずれていて、かつ上顎前歯は内向きになっているもの。 |
*これは骨格性の上顎前突なのですが、東洋人には珍しいのでイメージがしにくいと思います。詳しくは専門医課題症例をご覧ください。 |
アングルⅢ級:下顎大臼歯が相対的に手前にずれているもの。 |
*いわゆる受け口とか反対咬合のケースです。 |
印象(いんしょう)
歯科で歯型を取ることを「印象」と言う。英語ではimpression(インプレッション)。矯正歯科では通常、アルジネートと言う印象材を使う。これは、昆布のネバネバの成分なので人体には全く無害である。
取った型に石膏を流し込んで固めたものを「模型」という。
Eライン
鼻の頭と、顎の突端を直線で結んだものを「審美線」、英語でesthetic line(エステティックライン)、略してEラインと言う。この線よりも唇は内側にある方が、美しく見えると考えられている。
EOA(イーオーエー)
Extra oral anchorageの略。日本語では顎外固定と言う。ヘッドギヤ、上顎前方牽引装置など、お口の外側にある装置のことを総称して言う。
エッジワイズ法
1926年、E.H.アングルが発明したマルチブラケット装置。現在でも基本コンセプトは全く変わらずに使用されている。
MFT(エムエフティー)
Myo-functional therapyの略。日本語では、筋機能訓練療法という。舌や唇の筋肉の動かし方に異常があると、歯の位置に悪影響を与えて特有の不正咬合を誘発する(開咬など)。矯正歯科では、装置で歯を動かすだけでなく、症状の原因となっている筋肉の使い方も矯正する治療を行う。実際の治療は、筋機能訓練療法のコーチが出来る歯科衛生士が担当する。
遠心(えんしん)
歯並びの中心線(通常は前歯の中央)からみて遠い側向きのことを言う。たとえば、歯の奥側の面は、遠心面という。
Oリング(オーリング)
ブラケットとアーチワイヤーを固定する(結紮という)時に使う、ゴムリングのこと。通常は透明なものを使うが、おしゃれとしてカラーゴムを使用する場合もある。
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カ行
加強固定(かきょうこてい)
矯正治療では、常に動かしたい歯と、動いてほしくない歯を区別する必要がある。動いてほしくない歯について、より強固に動かないような対策をすることを「加強固定」という。具体的は、動いてほしくない程度に応じて、ヘッドギヤ、パラータルバーなどの付加的な装置を追加で使用する。
角ワイヤー(かくわいやー)
アーチワイヤーで、ワイヤーの断面が四角形になっているものをいう。この角ワイヤーを使用するのが、エッジワイズ法の最も重要な技法である。ブラケットの溝も四角形なので、その中にいろいろな方向にねじった角ワイヤーを入れることで、術者の思い通りの位置に歯を立体的に配置させることができる。
可撤式(かてつしき)
患者様が自分で簡単に取り外しができることを言う。逆にくっついたままで自分では外せないものは、固定式という。
カリエス
虫歯のこと。正式にはDental caries(デンタルカリエス)というが、歯科では通常略して単にカリエスという。
顎間ゴム(がっかんごむ)
自分で取り外せる輪ゴムを上下の歯のかけることを言う。マルチブラケット装置は固定式だが、上下の歯に同時にある矯正力を作用させたいときがある。その時に、ゴムを固定してしまうと、食事ができなくなったり歯磨きができなくなったりして日常生活に差し障りが出るので、患者様が自分で外してまた掛けることが簡単にできるようなやり方をする場合がある。掛ける場所は、症状に応じて様々だが、このやり方を総称して「顎間ゴム」という。
基底骨論(apical base theory)
「矯正治療の影響は歯を支えている骨の範囲に限られる」という説。現代の矯正学ではおおむね正しいとされている。ただし、上顎急速拡大や、ディストラクション法を使うと骨は大きくできるが、だからといってすべて非抜歯で配列できるわけではない。
機能的矯正装置(きのうてききょうせいそうち)
固定式、可撤式にかかわらず装置自身が歯を動かす力を発揮しているものを「機械式矯正装置」というのに対して、装置自身は矯正力を出さないが、装置を咬む力を矯正力にする方法を機能的矯正装置という。”機能的に優れている”という機能ではなく、患者様自身の筋肉の機能を矯正力に変換するという意味の”機能”である。具体的には、バイトプレート、FKO、などである。ヨーロッパの小児矯正でよく用いられる。アメリカ・日本ではあまり盛んではない。
急速拡大法(上顎)
第一小臼歯と第一大臼歯合計4臼歯を固定源として、中央の拡大ネジを0.2-0.25mm/日 拡大して正中口蓋縫合部を強制的に開き、そこに新しい骨の新生を促して上顎骨の幅を広げる方法。思春期までの上顎劣成長に対して効果がある。
急速拡大についての詳しい説明はこちら
頰側(きょうそく)
ほっぺた側の方向を頰側といい、奥歯の表面を頰側面という。
近心(きんしん)
歯の正中側(つまり手前側の面)の向きを近心という。その向きの歯の面を近心面という。近心面と遠心面の両方をさして「隣接面」という。
結紮(けっさつ)
ブラケットとアーチワイヤーを止めることを結紮という。通常は小さな輪ゴム(O-リング)または細い針金(結紮線)を使って止める。
傾斜移動
歯に力を加えると通常傾斜的に移動する。エッジワイズ法以外の矯正装置は基本的にすべて傾斜移動で歯を移動させる方式である。
外科矯正
口腔外科的に手術で骨の大きさや形、または歯の位置を変えることを総称して外科矯正という。外科矯正は通常、健康保険の対象になる。
検査
矯正歯科における検査には、「印象」(歯列模型を作るのに必要です)、レントゲン写真(正面像、側面像、顎骨のパノラマ像、歯のレントゲン像など)、顔写真、口腔内写真、噛み合わせチェックが基本であるが、必要に応じて、顎運動路、筋電図、CT、MRIなどを取ることもある。
咬合面(こうごうめん)
奥歯の咬む面のことを咬合面という。前歯は咬む面がないので、尖端のことを「切端(せったん)」、犬歯の場合は「尖頭(せんとう)」と言う。
固定
英語で言うとAnchorage(アンカレッジ)、錨のことですね。歯を動かすときの土台となる部分で、基本的には動いてほしくない部分のことを言います。しかし、矯正では絶対に動かない部分というのは作ることができないので、常に相対的に動いてしまうのですが、装置や仕組みを付加することで、より動きにくくすることはできます。
固定式
固定式の「こてい」というのは、英語ではFixedの意味です。つまりくっついていると言う意味ですので、可撤式に対する言葉です。矯正学においては「固定」とは全く違う意味で使用します。
個性正常咬合
理想的な完全無欠の咬合を「理想正常咬合」とすると、現実の咬合は決して理想的にはなり得ません。歯の大きさ、形、大きさのバランス、骨との関係、それぞれが個性の固まりなので、絵に描いたような理想が実現できるわけではありません。与えられた条件の中で最大のパフォーマンスを実現したものが「個性正常咬合」で、矯正治療の目標となります。
小林フック
結紮線の尖端に小さなフックをあらかじめ付けてあるもので、ゴムを掛けたい位置に結紮をするだけで、顎間ゴム用のフックが設置できるので、よく用いられる。できた経緯は謎ですが、おそらく小林さんという人のアイデア商品なのだと思われます。おそらく商標登録、もしくは特許があるのだと思いますが、海外でも「KOBAYASHI
hook」で通じます。
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サ行
歯体移動(したいいどう)
歯を単純に押すと傾斜的に移動します。より平行移動的に動かすことを歯体移動と言います。真の歯体移動が可能な装置は、エッジワイズ法です。
唇側(しんそく)
前歯の表側の方向を唇側と言います。
診断(しんだん)
検査結果を分析して答えを出すことを診断と言います。
シンチバック
ワイヤーの最遠心部にわずかに残った部分を、折り曲げることをシンチバックと言います。ワイヤーが前にずれてこないようにする処置です。シンチバックはした方が良いときと、しない方が良いときがあり、ワイヤーのエンドは常に折り曲げるわけではありません。
スポット電気溶接
金属同士を接触させ、そこに瞬間的に大電流を流すことで、熱を生じさせて金属を溶かして、冷えて固まる際に二つの金属を接合させる技法のこと。自動車の工場で車体を組み立てるときに使う溶接と原理は同じ。矯正では、バンドとブラケットまたはチューブを接合させる時によく用いられる。
舌側(ぜっそく)
歯の裏側の方向のことを舌側という。裏側の面を舌側面という。
舌側矯正(ぜっそくきょうせい)
裏側からする矯正のことをいう。
セファログラム
頭部X線規格写真のこと。矯正の診断には必ず必要になる検査資料。この写真に基づく計測学を通して近代矯正学は発展してきたと言っても過言ではない。1931年、アメリカのBroadbentや、ドイツのHofrathによってほとんど同時に確立された。
撮影規格が国際的に決まっているので、治療前後の比較や、症例の比較を縦断的かつ横断的にすることができる。特に側面セファログラムは、専門医が細心の注意でトレースを行い、各種計測を行って顎顔面と歯列の立体的な位置関係を把握するのにきわめて重要となる。
セパレーション
バンドを装着する前の前処置。歯と歯の間に隙間を空ける処置のこと。バンドは薄い板状の金属でできたリング状の部品ですが、歯と歯が強固に接触しているとうまく嵌りません。そこであらかじめ隙間を空ける処置が必要になります。小さな輪ゴムを挟んだり、ワイヤーを曲げて作ったスプリングを差し込んだりします。
セメント
歯とバンドを固定するときに用いる接着剤のことをセメントと言います。虫歯の治療の後、銀歯を入れたり被せたりするときに使うものと同じです。 |
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タ行
中心咬合位
歯が最大接触面積で噛み合い、最も咬合力が発揮できる位置のこと。矯正では、中心咬合位で個性正常咬合が確立することを通常目標としている。
DBS(ディービーエス)
Direct Bonding Systemの略。ブラケットやチューブというマルチブラケット法の部品を歯に直接接着剤で付ける方法のことを言う。
デボンディング
ブラケットを歯から外す操作のことをいう。現状では機械的に装置を引きはがす方法をとっている。
トルク
エッジワイズ法において、断面が四角形のワイヤーを捻ってスロットに入れることで、歯に回転力を掛けることをトルクという。単純な矯正力に、トルクを加味することで歯を平行的に移動させることができる(歯体移動)。エッジワイズ法の最大の特徴である。 |
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ナ行
二態咬合(にたいこうごう)
中心咬合位と思われる位置とは別に、もう一つ咬む位置が存在する症状。重症のアングルⅡ級1類の症状を持つ人にしばしば見られる。見かけ上の中心咬合位は仮の位置なので、治療が進むにつれて、もう一つの位置で咬むようになってくる。治療計画を大きく狂わせる原因になるので、最初の検査で咬合位の確認が欠かせない。 |
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ハ行
バンド
通常奥歯に付ける金属の薄い板で作ったリング状の部品。昔は、板状の金属を術者が自分でリング状に巻いて個別に製作していたが、現在では様々な大きさと形の既成バンドが用意されており、術者はその中から最も適当なものを選んで調整する。
パワーチェーン
Oリングがチェーン状につながったゴム。歯をアーチワイヤーに沿って牽引するときに使われる事が多い。
PMTC(ピーエムティーシー)
Professional mechanical tooth cleaningの略。歯科衛生士が、専門の機器を使い歯の表面を完全にクリーニングすること。通常のブラッシングで除去できない歯の表面のバイオフィルムを除去することで、虫歯予防、歯周病予防、着色の防止に効果があるとされている。矯正治療終了後に受けると効果的である。
フェイスボウ
ヘッドギヤ、ネックバンドなどの顎外固定装置と組み合わせで用いる可撤式のワイヤー。口のなかに入る部分を「インナーボウ」、口の外側にくるフックの部分を「アウターボウ」という。
ヘッドギヤの説明はこちら
部分矯正
マルチブラケット法を部分的に応用する場合や、床矯正装置で部分的に歯を動かす場合の矯正を言う。小矯正、限局矯正と言う場合もある。
プライヤー
矯正で用いるワイヤーを種々加工するときに用いるペンチ型の道具のこと。
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ライトワイヤープライヤー
アーチワイヤーの屈曲に用いる先の細いプライヤー。通常片側が四角錐型、片側が円錐型をしている。 |
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スナブノーズプライヤー
フェイスボウやパラータルアーチなどに使う0.7mm以上の太いワイヤーを屈曲するのに使うプライヤー。形はライトワイヤープライヤーによく似ているが全体的に太くできている。 |
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ツイードプライヤー
角ワイヤーにトルクを付与するときに使うプライヤー。ライトワイヤープライヤーと違い、両側とも四角柱の形をしていて、角ワイヤーをしっかりと捕まえて捻りを加えやすくなっている。 |
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ホープライヤー
カモノハシのくちばし状になっているプライヤー。アーチワイヤーを口の中に入れたり、シンチバックをしたり、結紮線を捻ったりと様々な用途で使われる。
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ユーティリティープライヤー
ホープライヤーの先を曲げてアーチワイヤーの最遠心部をより掴みやすくしたプライヤー。ホープライヤーと同じような使い方をする。 |
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エンドカッター
セットしたアーチワイヤーの最遠心部をカットするためのワイヤー。アーチワイヤーは、短いと最後方の歯のコントロールが効かなくなるので、少し長めにして入れて治療の最後でカットする。そのためには必須のプライヤー。 |
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ピンカッター
結紮線のような非常に細いワイヤーをカットするためのプライヤー。 |
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タイニングプライヤー
結紮線を捻るための専用のプライヤー。非常にきつく縛るときや連続的に結紮するときに用いると便利。 |
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スリージョープライヤー
太いワイヤーの尖端を曲げるための特殊なプライヤー。 |
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バンドリムービングプライヤー
バンドを歯から撤去するときに使う専用のプライヤー。 |
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ブラケット
マルチブラケット法で用いる歯の表面に付ける小さなボタン型の部品のこと。
材質 基本はステンレススチール製。ただし、現在では、ステンレススチールのブラケットはあまり使われていない(特に日本では。アメリカでは未だに金属製が主流。矯正を恥ずかしいと考えるか誇らしいと考えるかの国民性の違いだろうと思う)。セラミックス、エンプラ、コンポジットレジン、ジルコニアなど様々な透明系のブラケットが登場している。ただ、ブラケットの素材は、柔らかすぎてもいけないが、歯よりも堅いというのは非常に危険である。セラミックスやジルコニアのような堅い素材が歯と接触すると、歯の方が負けて欠けたり傷が付いたりする。セラミックスブラケットが登場したときには非常にもてはやされたのであるが、欧米では訴訟が相次ぎ、安易な使用は問題であると考えられている。危険のないよう安心して治療を受けるには、資格のある矯正専門医とよく相談した方がよいだろう。
エッジワイズブラケットの構造
構造 歯と接触する接着面のことをブラケットベース、中央の溝をブラケットスロット、ブラケットスロットを支える柱の部分をブラケットシャフト、結紮のための爪の部分をブラケットウイングという。スロットは長方形に溝が切られていて、間口が狭く奥行きが長い形になっている。通常日本で用いるブラケットは、0.018インチx0.025インチとなっている(先生によっては0.022インチx0.028インチの規格を採用しているところもある)。
位置 ブラケットを歯に付ける位置を、ブラケットポジションという。歯種によりどの位置に付けるか標準的な位置はおおよそ決まっている。基本的には歯面の中央に付けるのであるが、歯の先端からの上下的な位置(ブラケットハイト)、歯軸に対する角度(ブラケットアンギュレーション)は、歯の大きさや形、症状によって微妙に変化させて付ける。ブラケットポジションをどうするかはなかなか奥が深い問題で、矯正歯科医の力量の半分くらいはここで差が付く、と言っても良いだろう。
便宜抜歯
矯正の検査診断の結果、治療には大量の隙間が必要であると判断されたとき、便宜的に永久歯を抜歯して隙間を作ること。”便宜的”という言葉が、安易に抜歯しているような誤解を与えるため、最近では「必要抜歯」と言われることもある。通常は、上下左右の第一小臼歯を抜歯するが、症状や歯の状態によって様々な抜歯部位が選ばれる。
抜歯か抜歯かについての詳しい考察はこちら
ベッグ法
ベッグ法の仕組みベッグ法のマルチブラケット装置
マルチブラケット法の一種。オーストラリアのBeggが考案した方法。BeggはAngleの弟子なのだが、オーストラリアに帰国後独自にこの方法を開発し、エッジワイズ法には背を向けました。おそらく、Beggは、多くの矯正治療には便宜抜歯は避けられないという立場を取っていたので、当時の非抜歯論に巻き込まれないためには、独自の装置で治療した方がよいと考えたのかもしれません。
この方法は、日本でも一時期はもてはやされた時期もあるのですが、角ワイヤーが使えないのでトルクがかけにくい、金属製のブラケットしかないなど問題点も多く、結局今ではほとんど行われていません。この方法に関する日本の学会も解散してしまいました。
ただ、一時代を築いた先達として、リテーナーのデザインのBegg typeには名前が残っていますし、ピンカッターというプライヤーは、そもそもはベッグ法で結紮の時に使うピンを外すときの道具で、正式には”ピン アンド リガチャーカッター”というものなのですが、省略して「ピンカッター」と称しています。これもベッグ法の名残といえるでしょう。
保定(ほてい)
保定とは、「矯正治療によって移動した歯あるいは顎をその状態に保持させ、新たに獲得した咬合をそのまま安定刺せること」を言う。歯を動かす治療(動的治療)と同じくらい重要な矯正治療の過程の一つと考えられています。
保定のために使う装置のことを、保定装置(リテーナー)と言います。多くの場合は可撤式のBegg typeとかHawley typeという、人工歯の部分をくりぬいた入れ歯のような形をした装置を使うのですが、裏側にワイヤーや金属プレートを接着して固定式で保定する場合もあります。保定がおろそかになると、後戻りが生じやすくなります。
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マ行
丸ワイヤー
断面が円状のアーチワイヤー。治療の初期の段階で使用されることが多い。トルクをかけることは出来ない。
模型
印象に石膏を流し込んで固めたものを言う。矯正歯科ではこれに7角形または6角形の台を付けて診断用模型とするのが通例。その際、台の底面と咬合面を平行にして作製するので、平行模型という。
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ヤ行
ヤング率
弾性係数のこと。この値が大きいと一定の歪みに対して応力が増大する。矯正歯科医は、対象となる歯に適切な力を加わるように、ワイヤーの材質を変えたり、ループなどを形成したりして細かな調節をしている。
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ラ行
レジン
歯科で良く用いられるプラスチック系の素材の一つ。リテーナーのプラスチック部分もレジンだし、ブラケットを歯に接着するときの素材もレジンである。その他、歯科では虫歯の修復に使う素材や入れ歯の素材も多くがレジンで出来ている。
レベリング
マルチブラケット法を始めたときに行う歯並び全体の平準化のことをいう。矯正治療は、ある程度歯並びの概略が揃った後、いくつかのグループに歯を分けて動かしていくという手法をとるため、各歯が全くバラバラ状態だと治療を進めることが通常は出来ない。したがってレベリングをいかに速やかに行うかが、治療を進める上で重要なポイントとなる。
弄舌癖
舌悪習癖、幼児性嚥下癖と言うときもある。乳児は、母乳を飲むとき舌を前に出して上の歯茎と舌で、乳首をしごくようにして摂食嚥下運動を行う。乳歯が萌出してくるとやがて摂食嚥下の主役は歯になるので、次第に舌は前に出さなくなるのが自然なのであるが、その摂食嚥下運動の転換がうまく行われない場合、常に舌が前に出すぎの状態が残ることになる。この状態が、弄舌癖と考えられている。舌が歯を押し出すため、前突が起きたり開咬が生じたりする。
ロー着
二つの金属を接合するとき、その金属よりも融点が低い金属を、隙間に溶かして固めて接着させる技法のことを鑞着(ロー着)という。バンドとワイヤーを接合するときや、ワイヤー同士、ワイヤーとフックの接合などに使う。矯正では台に固定せずにフリーハンドで行うことが多く、その場合は、自在ロー着という。矯正歯科医が身につけなければいけない基本的な手技の一つである。
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ワ行
ワイヤーガード
ブレースリリーフとも言う。ブラケットやワイヤーの凸凹感を緩和するための樹脂。ワックスやシリコンで出来ている。特にマルチブラケット法を始めて1-2週間は、唇やホッペタの内側の粘膜を痛めやすいので、ワイヤーガードが用いられる。 |
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